8. 不思議
本当にあの橋の真下は、波の無くて水が青々としてうす気味悪かった。
それから、一度足だか悪い少年が溺れたのよ。明鏡橋の下流50メートル位のところに沈んだんだな。イカリを、ばあって流してひっぱったんだけどだめだった。川ざらいしたのだけど出てこないのだな。俺らも心配して、川の向かいから見守っていたのだな。
そしたら、ユウガオて知てるべ、あの食べる夕顔だな。昔は、あれをなるだけ長く延ばして育てたのだ。そして長いこと井戸につけて、中をくりぬいてこれを容器にしたものよ。それに蓋みたいのかぶせたり、新聞紙丸めてねじりこんで蓋したのだ。「敏夫、小豆て書いてくれ」言われたら、おら小豆て書いて張って保存した、豆なら豆、ササゲならササゲて書いてな。そんな容器どこの家にもあったもんだ。
その死体探すのにその夕顔の容器使ったのだな。その容器の中に、神様だか、お守りだかお札入れて流したものよ。流すと、スー流れて、いたとこ、ここだって教えるって言うのだな。そこにクルクルと止まるてよ。ほだな試して「ここさ、くぐれ」って、くぐった。
見つかった。そこで見つかった、手でこう合図して泳いでくるのを見た、俺覚えてる。夕顔で見つかったのだな。親戚の人でも頼んだんだべ。神様だか、仏様だか俺は知らないけど、見つかったのは事実だ。
(つづく)
目次へ戻る
|