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キャンドル以外の蜜ろうの使われ方を紹介しております



   

11.紫雲膏 2010.2.2更新

西堀薬局製 

 仙台市一番町にある漢方の(有)西堀薬局さんは、10年以上前から「紫雲膏」の基剤として私の蜜蝋を使って下さっています。2度目の注文の折りに「良質な蜜蝋に出会えた」と言葉をいただき嬉しさがこみ上げた事を思い出します。代表の鈴木弘明さん(77)に改めて電話でお話を伺いました。
 鈴木さんの作る紫雲膏は、消炎効果のあるシコンや血を温めるトウキをゴマ油で抽出し、油を固めるために蜜蝋を加えて作ります。ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、外傷、火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷、かぶれなど皮膚の炎症や乾燥に良いそうで、近頃はアトピーの方の利用が増えているそうです。リピートして買われる方も多いとのこと。なにしろ成分の4分の1にあたる蜜蝋を毎年5kg、10kgと買っていただいているのです。多くの皆さんに愛用されていることを納得させられます。お話を伺っている最中にも受話器の向こう側で紫雲膏を求めるお客様がいらして驚きました。
 材料は蜜蝋に限らずどれも良し悪しがあり、良いものを使えば効果もその分優れるとのことで、たとえばトウキは貴重な大和産、シコンは優品の硬紫根を使っていらっしゃいます。中国由来の漢方薬と思っていましたが、江戸時代の外科医「華岡青洲」が考案したものだそうです。
 西堀薬局の始まりは近江から呼び寄せられた伊達家おかかえの「小谷薬種屋」で、鈴木さんのおじいさんのでっち奉公先でした。おじいさんは奉公が終わり東京で食器の店を開き繁盛しますが、小谷薬種屋の経営が傾いたことを知り、商売を捨て仙台に戻り、立て直しに尽力なさったのだそうです。西堀薬局の真摯な漢方薬づくりは、そのような先代から続く優しさが今に息づいているのだなと感じました。そして、私の蜜蝋が多くの人に役だっていることに、また格別な嬉しさがこみ上げました。

 西堀薬局 / 仙台市青葉区一番町4-11-1 tel 022-222-4080
 取材 / 平成22年1月

 


   

10.オカリナ 

 山形市にお住まいの井上輝雄さんは、蜜ろうを手作りオカリナの仕上げに使って下さいました。
 陶芸を趣味となさる井上さんは、30年前、宗次郎にあこがれたことをきっかけにオカリナ制作を始めたのだそうです。十数個作っても上の音が出ず挫折したこともあったそうですが、5年程前に再開し、これまで100個以上を手がけられました。焼き上がって初めて音を出すときはとても嬉しいそうです。
 蜜ろうは、溶かして塗ったものを、バーナーであぶりながら拭き込んだり、椿油を混ぜてペースト状にしたものを塗って仕上げられました。最近の安全指向やシンナーの臭いが嫌がれる傾向を踏まえてとのこと。通常使っているカシュー油(人工漆)と違った落ち着いた仕上がりになったそうで、「まずは満足」とメールを下さいました。
 私もどうしても見てみたくなり、お邪魔させていただきました。色合いも触った感じも優しくナチュラルでとても美しかったです。そして井上さんの奏でるその音の優しさに聞き惚れてしまいました。
 これからは、もっと艶を出すために、蜜ろうをベースに、「荏胡麻油」や「松やに」を混ぜたものなども試し
たいと話して下さいました。
 井上さんの愛情いっぱいで作られたオカリナを見ていると、私もとても誇らしい気持ちになりました。

取材 / 平成20年1月

 

 

   

9.不思議な画材

 米沢東高等学校で美術を教える吉田卓哉さんは、蜜ロウを使って抽象画を描かれます。
 私は単純に油絵の具に蜜ロウを混ぜて塗るのだろうと思っていましたが、先日米沢市のギャラリー「パセオ」で開かれた個展に伺って驚きました。蜜ロウそのものを画材として使っていたのです。感動したのは、象徴的な存在の‘かぼちゃ’や‘祠’を描いた暗い背景に、無数の星のように、ぽたぽたとしずくを垂らした蜜ロウです。神聖な静の空間、あるいは時間、微塵な魂の浮遊、異次元の空気などを勝手に想像し見入ってしまいました。
  その蜜ロウは寒さで表面に「ろう粉」をつけ白くなっていましたが、「予想外でしたがそれがいいのです」とおっしゃられました。よく見ると、絵の中に大きく描かれたロウソクもまぎれもなく蜜ロウそのものでした。蜜ロウが絵の中で大切な役割を持って活躍している事に、誇らしく思い、満足して帰ってきました。 

取材 / 平成19年1月

 

 

   

9.木材の蜜ロウ曵き


 山形市にある旧県庁「文翔館」は、大正時代に建てられたルネサンス様式レンガ造り三階建てのしゃれた建物です。ここでは、山形の歴史や建物についての展示・資料館にもなっていて、ガイドさんによる親切な説明も受けられます。
 だいぶ前に、まだ小さかった子ども達が、いたずらで改修工事のVTR映像をスタートさせてしまったことがありました。申し訳ないので見ていたら、興味深い映像が現れました。
 床のろう曵き作業です。手順は次のような感じでした。まず、床一面にペースト状のロウを塗り、 図のような、大きな網わたしのようなものの上に炭を置きます。床からの距離は5センチ位でした。一人がそれを抱え、ゆっくり後ずさりしながらロウを溶かしていきます。そのあとを二人の職人が布で忙しそうに拭きあげて進みます。
 それ以来私も、机や棚にせっせと蜜ロウを塗るようになりました。蜜ろうだけを塗りたくて、強引に仕事で使っているガスバーナーで溶かし、急いで拭いていますが、時々板そのものを焦がしてしまうこともありました。建築関係の友人に聞きましたが、工業用の強力なドライヤーがあるそうです。
 もっと安全に手軽に塗るには、文翔館の床のように、荏胡麻油など植物油を混ぜペースト状にしたものを塗り、ドライヤーで温めながら拭きあげる方法がいいようです。蜜ロウ:植物油の割合は、1:3位だったと思います。
 蜜ろうを塗ると、 淡い自然な色艶が出て私は好きです。木材の種類にもよりますが、染み込めば染み込むほど深い色合いになるようです。工房にある木造校舎からいただいてきた机や椅子には、ぴったりのワックスです。
 以前取材にいらした赤池 学さんは、蜜ロウを染み込ませていれば、多少の傷なら元通りにしてしまう自己修復力ができると、著作本『ものづくりの方舟』(講談社)で紹介下さいました。
 今年は、工房の外壁の板にも塗ってみようかと考えています
 

平成18年6月